ガラス製温度計 > ガラス製温度計について

使用される感温液の種類による分類
  水銀温度計 精度が高く使用温度範囲が広い。−50〜650℃
  有機液体温度計 精度はやや劣るが見易い
低温域に使用できる。−200〜200℃
主に赤色に着色されているので赤液温度計ともよばれる。
 ・食品関係などで、水銀は使用できないが精度を必要とする場合には、エチルアルコールがあります。使用条件を細部に
  指定すれば、かなりの精度が保証されます。
 ・有機液体の中で、通常使用される感温液は、次のものがあります。
  エチルアルコール −50〜50℃  白灯油(ケロシン)−30〜200℃
  トルエン        −80〜100℃ 工業用ペンタン  −200〜30℃


形状等による分類
棒状温度計と二重管温度計
全浸没温度計と浸没線付温度計
直型温度計とL型温度計
棒状温度計 ・・・・・・・ 目盛がガラス管表面に直接刻まれている温度計で多少読み取りにくいが丈夫である。
二重管温度計 ・・・・・ 目盛が毛細管の背後のガラス板に刻まれているので読み取りが正確にできる。精密測定に適している。「基準温度計・標準温度計」などがこれに属する。
全浸没温度計 ・・・・・ 感温液全体が測ろうとする温度に保たれた状態で目盛り定めされた温度計で最も多く使用されている。(図1a)
浸没線付温度計 ・・・ 感温液の一部を常に露出させた状態で目盛り定めされた温度計で、全浸没の状態で測定できない場合使用される。(図1b)「足長温度計」などがこれに属する。
L型温度計 ・・・・・・・ 測温位置や方向によっては、曲がっている方が読み取り易い場合、使用される。

 用途による分類
一般家庭用 ・・・・・・・・ 室内用温度計冷蔵庫用温度計料理用温度計
農業用・気象用 ・・・・・ 各種最高最低温度計乾湿計地中温度計記録式温湿度計
研究室・試験室用 ・・・ 基準温度計・標準温度計各種JIS規格温度計水銀温度調節器
一般工業用・船舶用 保護枠付温度計隔測温度計

注意すべき事項
  ガラス温度計を用いて正しく温度を測るためには心得ておかなければならない幾つかの重要な事柄があります。これらは何れもガラス温度計の特性に由来する基本的な事項なので充分に理解した上で、ガラス温度計を使用する際には、適切に配慮する必要があります。
1)液切れ  ガラス温度計の感温液は振動、衝撃や異常な部分的加熱などにより感温液柱の途中で切断され空間が生じることがあります。これを液切れと言います。感温液柱頂部の空間が気薄の場合には特に液切れを生じ易いので輸送や保管の場合には球部を垂直にまたは斜めに保持するよう注意が必要です。液切れしたままの状態では正しい温度は測れませんので、使用する前には必ず液切れの無いことを確認しなければなりません。
2)視差

 ガラス温度計の示度を読取る時には、感温液柱に垂直に、液柱頂部と同一水平面内に目を置いて読取らなければなりません。この目の位置より上または下の位置で読取りますと、感温液柱頂部と目盛の位置に間隔があるため読取り値に差異を生じます。これを視差と言います。(図2参照)この視差を除くために小さい穴をレンズの中心に設けた拡大鏡や遠く離れた望遠鏡を利用するなど工夫がなされています。

3)零点降下  暫く放置しておいたガラス温度計で氷点(0℃)を測った後、これをある時間高温に保った後に再び氷点を測ると読取り示度が前より少し下がっている事がわかります。これは高温度に於て膨張した球部の容積が急に冷却されても直ぐにはもとの容積に収縮しないためで、これを零点降下と言います。そのまま数日間放置して再び氷点を測ると最初の読取り示度にもどっていることがわかります。温度計を100℃に30分間保った時の直前直後の氷点の示度の差を零点降下恒数と言います。温度の精密測定において零点降下による誤差を除くためには、温度計を使用する前に、最高目盛線近く迄高温に保つこと、また使用後に氷点などの基準となる目盛について示度読取りを行ない誤差を確認する事が必要です。
4)経年変化  ガラス温度計は、製作後月日がたつにつれて次第に球部が収縮し氷点などの示度が高くなる傾向を示します。これを経年変化と言い、ガラス材質や製作時の熱処理によってその変化量は異なります。一般に、始めは大きく次第に小さくなって行きます。また使用温度が高い程その変化は大きく且つ早く生じます。このため温度計は使用目的に応じて、ガラス材料が選別されまた熱処理による人工経年変化が行われています。
温度の精密測定において、経年変化による誤差を除くためには、氷点目盛などの基準となる目盛について示度読取りを行ない経年変化量を補正する事が必要です。
5)遅れ  ガラス温度計を測ろうとするものの中にいれた時に、すぐには正しい示度を示さずある時間がたって後にはじめて正しい示度を示します。この遅れの時間は、温度計の構造、感温液の種類、使用の環境や状態などによっても違います。例えば感温液が有機液体のものは水銀のものより遅れが大きく、測るものが気体の場合は液体よりも遅れが大きくなります。また球部が大きいものは小さいものより、球部の容積は同じでも太く短かいものは細く長いものより遅れは大きくなります。
構造の違う温度計の示度比較を行なう場合、特に変化する温度を測る場合などこの遅れによる差異を生じることがありますので注意が肝要です。
6)圧力の影響  一般にガラ温度計は、大気圧の下で球部を下にし直立の状態で恒温そうの中に入れて目盛定めされています。従ってこの時の球部の内外圧と違う圧力を球部に与えると温度計の示度は変化します。その変化量は球部の形状やガラス壁の厚さによって違いますが大よそ水銀温度計で0・1℃/kg/cm2程度で、外圧の増加により示度が上がり、内圧の増加により示度が下がります。例えば水深10mで示度は約0・1℃上昇します。温度の精密測定や温度計を保護ケースに入れて使用する時などには球部に異常な圧力が加わらないよう注意が必要です。尚、有機液体温度計の圧力による影響は水銀の約7分の1で測定精度の上から殆んど問題になりません。
7)浸没
 ガラス温度計で温度を測る時に、球部下端からどの位置までを測る温度に保つかを浸没の条件と言います。完全浸没、全浸没、部分浸没の3通りに大別されています。(図3)
 完全浸没は、球部下端から頂部上端まで温度計全体を測る温度に保つ状態です。気温測定などはその良い例の一つです。
全浸没は、球下端から感温液柱頂部までの感温液全体を測る温度に保つ状態を言い、浸没線のない一般の温度計はこの状態で正しい示度を示すよう目盛定めされており、全浸没(又は全没)温度計と言います。
 部分浸没は、球下端よりある決められた距離までの部分を測る温度に保ち感温液柱の一部を測る温度の外に露出した状態をいい、この距離を言い表わすのに浸没○○mmと言います。またその位置を示すために刻まれた線を浸没線、浸線又は没線と言い、この温度計を浸没縁付(浸線付または没線付)温度計と言います。
8)露出部分の補正  ガラス温度計で温度を正しく測るためには温度計を目盛定めした時と同じ浸没の条件で行なうことが必要ですが、実際には寸法や周囲の環境条件などの関係で不可能または困難なことがあります。この場合は計算によりその誤差を補正または評価します。この補正式は全浸没温度計と浸没線付温度計ではやや異なります。

a)全浸没温度計の補正
 全浸没温度計は図4(a)に示す浸没の状態で正しい温度を指示しますが一般に図4(b)に示すように一部を露出して用いられることが多く、露出している部分の周囲温度が測る温度よりも低い場合は正しい温度よりやや低い温度を指示し、また逆に、周囲温度が測る温度よりも高い場合は正しい温度よりやや高い温度を指示します。
測る温度をT、温度計の示度をt、感温液の露出部分の平均温度をts、感温液の露出度数をn、感温液のガラスに対する見掛けの膨張係数をKとしますと、補正値?tは?t=nK(T−ts)
また近似的に?t=nK(t−ts)
で求められます。
tsを測定するために糸球温度計なども用いられていますが実際測定は容易ではありません。

b)浸没線付温度計の補正
 浸没線付温度計は球部下端から浸没線までを測る温度に保ち、感温液の他の部分を測る温度の外に露出して目盛定めされていますので、使用する時に露出部分の温度が目盛定めの時の温度と違う場合には正しい示度を示しません。露出部分の温度が目盛定めの時より高ければ正しい温度より高い示度を、逆に目盛定めの時より低ければ正しい温度より低い示度を示します。
浸没線から測った感温液の露出部分の度数をn、感温液のガラスに対する見掛けの膨張係数をK、露出部分の平均温度を目盛定め時ts、使用時tuとすると、補正値?tは?t=nK(ts−tu)
で求められます。
9)器差と補正値  検査表付の温度計の読取り示度を補正して正しい温度を求める際に、よく問題になるのがこの器差と補正値です。検査表によって器差が記載されていたり、補正値が記載されており、しかも器差と補正値は同じ値で正負符号が逆なため、取扱いを誤ると器差または補正値の倍の誤差を生じるからです。器差と補正値の定義をよく理解して、読取り示度を正しく補正致しましょう。
 器差=示度−真の値 補正値=真の値−示度
従って、真の値を求めるためには、上式より
 真の値=示度−器差 真の値=示度+補正値
となります。
例えば、温度計の示度が25.4℃、25℃の器差が+0.1℃ならば正しい温度は、25・4−(+0.1)=25.3℃となり、補正値が25℃で−0.1℃と記載されていれば、正しい温度は、25.4+(−0.1)=25.3℃となります。因みに計量法による基準器検査成績書には、表わす量(示度)に対する器差が記載されており、気象業務法による検定証書には、示度に対する補正値が記載されています。その他メーカー器差表、補正表など各種のものがありますので注意が必要です。

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